木の章 鹿


9 基本動作「太極運動」
  


 さて、五禽戲の「鹿のエクササイズ」を紹介する前に、まず、五禽戲のすべての動作に共通する基本動作を教えましょう。

「太極運動」と名付けたこのエクササイズはイラストABのような二つの形をつなげた動作です。この運動は「鹿のエクササイズ」の基本運動であり、猿や、熊、虎、鳥の動作の中にも含まれています。

 「一陰一陽これ太極なり」という言葉がありますが、それは古くから伝わる、物事の道理を示した言葉です。ひとつの「陰と、ひとつの「陽」が合わされば、それが太極であるという意味です。
 
 この動作は多くの肉体労働の中に含まれています。鍬で畑を耕す動作、櫓(ろ)を漕ぐ動作、鶴嘴を振り降ろす動作、スコップで雪を掻く動作、網を引く動作など、数え上げたらきりがありません。
 
 さらに、様々なスポーツ、武術などの動作の中に隠れている、力強さの秘訣ともいえる運動です。例えば、バスケットボールのボールを「トス」する動作の中に、サッカーの「スローイン」の動作の中に含まれています。

 それは、昔の日本人にとっては、当たり前の動作でした。そして多くの現代人が忘れてしまった動作です。

 「太極運動」は図のような二つの運動によってできています。イラストAを「ダウン」、イラストBを「アップ」と名付けました。この運動が太極拳の各動作の中にも含まれているといえば、長い間太極拳を練習している人でも意外に思われるかもしれません。
 
 
 
イラストA「ダウン」 イラストB「アップ」
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